お家にかえりたいいいいいい!ヽ(`Д´)ノ
って事で、しばらく更新していないので、たまにはこんなのも?
夢の王 現の民
刮目せよ
幻想を忘れた大人たちよ
空想を知らぬ子供たちよ
我が言霊を聴け
実に囚われし心を解き放て
虚にこそ我在り
そして真実を聴け
我こそ森羅万象なり
~大いなる叙事詩 終章より抜粋~
第一章 失われた宝
宝王の崩御
手が届きそうな暗雲のもとに、城が建っていた。あたかも城の先からその雲が出ているかのようである。まだ時間的に夜と呼ぶには早いが、城下町は息を潜め何か悲しみに耐えているようである。
一つの落雷の後、にわかに城内に緊張が走る。
「法師を、法師を儀式の準備を」
家老が城内を走り回る。城の一番高い部屋の主に人々の意識が集中している。
「誰かあるか」
か細い声で、病床の人物が言った。
「私、アッソがここに」
二日前にこの部屋に入るやいなや、部屋の主の視界を逃れ最も遠い場所に片膝を着き不眠不休で居た人物が答えた。
「ピエトラの言う、儀式と何か」
「思うに宝王陛下の“転生の儀”かと」
病床の男は、残る力を振り絞るかのごとく身を起こした。
「それはならぬ、すぐにピエトラをここに」
程なくして、呼ばれた当人がその至高の主の元に現れる。
「貴殿は何を目論んでいる」
鋭い視線が家老を見つめる。
「宝王陛下の御転生の準備でございます」
恭しく頭をさげ、震える声で老人は言った。
「そのようなこと許さぬ。死者の冒涜と生者の人格の支配。我が友たちがそのようなこと許すと思ってか」
生気のない顔から、意のこもった声が発せられる。そのころ天空では城の頂上めがけ一本の雷が下り、暗雲は東西に真っ二つに割れた。天空の闇より雷に照らされて大きな影が二つ、城の高いところに遙か昔にあつらえられた天空の王たちの玉座に舞い降りた。東に真珠の透き通る白より更に白い白竜、西に漆黒の闇よりなお黒い黒竜が舞い降り二頭とも悲しげな目で城の中を窺う。
「ロブスト、イデアーレ。来てくれたのか」
家臣のもくろみを何とか阻止できると、安心しながら言った。
「我が友人、ソーレ。我らの命と共有を希望するか」
ロブストと呼ばれた白き竜が、苦しみの表情で言った。
「我らと永き時間を共に過ごそうぞ」
イデアーレと呼ばれた黒き竜が、すがるような思いで言った。真っ二つに割れた暗雲はいつも間にかつながり、その中で雷が荒れ狂っていた。
「すでに、精霊は離れたか」
「契約を破棄したようだな」
竜たちの会話は絶望を意味しつつある。
「アッソ、我が鎧をもて」
命ぜられた男は恭しく頭を垂れてから部屋を出ていった。その男の顔にはすでに涙が流れている。
王宮に武官、文官はおろか侍従までが、集まっていた。その全ての視線は正面の玉座に向けられている。ファンファーレが鳴り城の主が姿を現す。一同が頭を下げて迎えるが、いたる所ですすり泣く声が聞こえてくる。至高の主の姿は、力強く聡明ないつもの姿ではなく長い病でたどたどしく、やっとの思いでそのあるべき場所に着いた。
「皆のもの頭を上げよ」
目一杯の声が上げられたのだが、その音にはもはやはりも力強さもなかった。
「我が余命も幾ばくもないと悟った。そこで遺言を述べる」
王宮、謁見の間はすすり泣く声で充満している。
「この国の王位を我が魂の双子の兄に譲る」
まだ人類が幼き頃、知識を求めんとする人類に大いなる意思により一つの選択を迫られた。選択肢は二つ
“真理を求め、生命の頂点となるか”
“万物と共に生き、真理を聞くか”
そして幼き人類はその選択が出来ずに人類の生活する地球は二つとなった…
前者の考えを持って生きる人間が暮らす、「理論や科学の理」が通る地球を“理論の地球”。
後者の考えを持って生きる人間が暮らす、「精霊や魔法の理」が通る地球を“精霊の地球”。
古の選択は未だ成されず、片方の地球ではその選択すら忘れ去れていた…
それから城内は悲しみに包まれた。
「霊法師を集めよ」
若き女性が謁見の間を飛び出しながら叫ぶ。
「ルーナ様、落ち着きくださいますよう」
「何を言う。お兄さま、いや宝王陛下の遺言を聞いたであろう。すぐにでも次王の即位をされないとまた国が乱れる。それが解らぬか」
女性に付き添うかのごとく出てきた老人にその女性が言い放った。その目には涙があふれ唇は悲しみを表に出さないように堅く噛みしめられ血が滲んでいた。兄の死を最も悲しみすぐにでも崩れ落ちそうな自分を「遺言を守る事」で保っているかのようである。
「しかし、これより国中で喪に服します。宝王陛下の御崩御でございます」
老人は現実を見定めていた。ルーナは早足で自室に向かっているようである。
「貴殿は解らぬのか。この国の行く末が、兄様がどれほどの苦労をして保った平和か。皆安心して暮らせるこの国が」
老人は黙ってついていくのみだった。
「精霊王との契約は一代のもの。既に契約は無きものとしても。竜族、獣族、亜人族、妖精族との盟約は21夜中に新王との契約が必要だ。それまでに各ギルドとの話し合いも行わないと、またあの乱世に戻る。それに何よりも神器が割れるの怖い。一刻も早く霊法師を。私は自室で待機する。集まったら呼びに来られよ」
そういって扉の中に入って行った。老人は部屋の前で頭を下げてしばらくそこに立ったまま部屋の中から聞こえる叫ぶような鳴き声を耳に止め霊法師を集めに行った。
先ほどの老人が悲しみに満ちた薄暗い廊下を歩き扉の前で止まり静かにノックをした。中から返事が返る。
「ルーナ様、準備が整いました」
そして出てきた少女の目は涙で赤くなっていた。そして今も流れ出る涙を拭きもせずに歩き始めた。
「何人集まりましたか」
「城下のギルドに問い合わせたところ現在二十名招集に応じるとのこと。間もなく入城いたします」
いつもの謙虚な王妹の態度に少しホッとしながら老人は答えた。しかしながら未だ城内は悲しみに包まれていた。薄暗い廊下を進み“儀式の間”に二人はたどり着いた。時同じくして招集のかかった霊法師が部屋に入ってくる。招かれた者はは恭しく、王妹の前に並び片膝を付いて挨拶をしようとしたが、される側に制された。
「時は一刻を争います。みなさんご存じのことと思いますが、宝王陛下が御崩御なされました。宝王陛下は次期王位を“魂の双子の兄に譲る”と遺言を残されました。皆さんには宝王陛下の“魂の双子の兄”をお探しくださいますようにお願いします」
今なお崩れそうな身を何とか耐えてルーナは言った。
「畏まりました」
霊法師の長はそう言って、皆に指示を出して“魂の双子の兄”を探す術に入った。その作業をみながらルーナは部屋の端のイスに着くなり意識を失った。
月が天空を巡りまた沈みかけた頃、ルーナは起こされた。
「宝王陛下の“魂の双子の兄”様の所在がわかりました」
霊法師は苦渋の面もちで答えた。重い空気を察しながらルーナは霊法師にその場所を聞く。
「“理論の地球”でございます」